2018-10-30更新
「マークXとカムリから見るガソリンエンジン時代の終焉」
マークXとカムリから見るガソリンエンジンの終焉
マークXとカムリを分かつもの
お世話になっております。
株式会社ラグザス・クリエイトの知念です。
私が国産車の中でも1・2を争うほど好きな車があります。
それがマークXです。
個人的にはインテリア・エクステリア・ブランドイメージ・乗り心地・走り味・どれをとっても完璧だと思っています。
最初に乗車した時の感動は今でも忘れることができません。
本当に素晴らしい車です。
トヨタの中でも比較的古い歴史を持ち多くの人に指示されていた車です。
ですが・・・。
近年マークXの売れ行きが芳しくありません。
実際、かつて「トヨタ・マーク2」といえば日本セダン界におけるスーパースターでした。
マーク2/チェイサー/クレスタの三兄弟でハイソカーブームを牽引し、80年代後半には3台合わせて月販4万台以上を販売していました。
しかし時代は移り変わり、後継車のマークXへとバトンタッチしてから徐々に人気は下降していきました。
一時期、俳優の佐藤浩市さん演じる「部長」のCMが話題となって人気を盛り返すも、2018年3月の月販台数は675台、4月はなんと252台と低迷していきました。
取り扱い販売店であるトヨペット店系列にはすでに「現行モデルは生産終了、次期モデルはなし」という内容が通達されており、販売台数は急下降しています。
最近は2017年7月に新型カムリが新規扱いモデルとして発売されたことで、余計に売れなくなっており、各販売店では「FFとFRの違いはあるが、どうせ近い価格帯で近いコンセプトなら新しいほうが売れる」ということで、積極的にカムリを販売しています。
その施策もあり、実質的にマークXの顧客はカムリへと引き継がれたと考えられます。
いったいマークXに何が起こったのでしょうか。
これほど素晴らしい車なのにもかかわらずなぜ売れなくなってしまったのでしょうか?
マークXのコンセプトというのはマークⅡの時代から一貫して受け継がれているはずにもかかわらず、急にニーズがなくなってしまったのは一体なぜなのでしょうか?
それに対してカムリは順調に販売台数を伸ばすことに成功しています。
私はカムリにも乗車したことがありますが、ボディサイズはカムリの方が大きく、室内の快適性もカムリの方が高かった記憶があります。
ですが、マークXのインパクトと比較すると、車トータルとしてまとまりがあり記憶に残るドライビングプレジャーを提供してくれる車はマークXであると実感しました。
セグメントや価格帯に関しては大きな差が無いこれら二車種において、なぜこのような大きな差がついてしまったのでしょうか?
ここでマークXとカムリを分かつ大きなポイントがあります。
それがエンジンです。
マークXはガソリンカーであるのに対して、カムリはハイブリッドカーです。
カムリに関しては少し大きめのプリウスとして通用するほどの燃費を誇る最新式のハイブリッドカーなのです。
実際、私が乗車したカムリは最後のガソリン車でしたが、その車を最後にカムリは全てハイブリッド化されました。
そこから2世代に渡ってハイブリッドに統一されました。
カムリは今では完全にハイブリッド車となりました。
そんなカムリはアメリカでも月間3万台以上も販売実績のある大成功を収めた車です。
ここから分かることはマークXとカムリという車の魅力の違いで販売台数に差が付いているのではなく、ガソリンカーなのかハイブリッドカーなのかで販売台数に差が付いているのです。
時代はハイブリッドカーに傾きつつあります。
では一体どれほどガソリン車の販売台数が縮小していくのでしょうか?
ここに説得力のあるグラフがあります。
上記はトヨタの寺師茂樹副社長の電動化車両普及に向けた取り組み説明会の中の一コマです。
上記の写真の中のデータを参照していただくと、今後いかにガソリン車が減っていくのかを確認していただけるかと思います。
この違いこそがマークXとカムリを分かつものと言えるでしょう。
ガソリンカーとしてのマークXとハイブリッドカーとしてのカムリでは上記のデータを参考にして頂いた場合明暗は明らかです。
実際、電動化車両普及に向けた取り組み説明会の中において、寺師副社長は2025年をめどにエンジン専用車を廃止することを明らかにされました。
ちなみに、上記の写真の中のデータに出てくる4区分のガソリンエンジン車以外の自動車ついて説明していきたいと思います。
ガソリン車以外の自動車の区分
<HVとは>
HV(ハイブリッドカー)は、現在日本で最も普及しているエコカーです。
「ハイブリッド」には、「異質なものが組み合わさった複合型」という意味があるように、HVはガソリンで動くエンジンと、電気で動くモーターが複合された仕組みとなります。
ハイブリッドシステムの中にもいくつか種類が存在します。
例えば、エンジン駆動が主体で発進・低速時などでモーターがアシストするタイプや、場面に応じてエンジン駆動とモーター駆動とで切り替えを行うタイプなどがあります。
これらに共通して言えるのは、エンジンとモーターを効率よく使い分け、低燃費を実現しているという点です。
<PHVとは>
プラグインハイブリッドカー(PHEV)といえば、ハイブリッドカー(HV)に外部充電機能を加え、電気だけで走れる距離を大幅に長くした次世代エコカーです。
プラグインハイブリッドカーはハイブリッドカーを進化させ、バッテリーへの外部充電機能を持たせたことで、電力供給が可能になっています。
さらに多くの場合バッテリーの容量もアップしており、EV走行できる距離も伸びています。
普段の通勤や買い物といった決まった範囲内の移動なら、電気のみでの走行が可能です。
自宅や出先の充電スポットで充電するなど、普段は電気自動車として利用が可能なため経済的です。
電気自動車の場合、航続距離を上回る長距離ドライブの場合は、充電スポットを気にしながら走行しなければなりません。
プラグインハイブリッドカーの場合は、走行用バッテリーの電気を使い切ってもガソリンエンジンで走行可能なので、航続距離を心配することはありません。
<FCVとは>
FCV(燃料電池車)は、エンジンを使わず”車内で発電する”電気自動車です。
ここまでご紹介したエコカーと比べると、認知度や普及度が少し低いかもしれません。
FCVは液体水素を燃料とし、水素と酸素の化学反応から電力を作り出す「燃料電池」を搭載し、モーターで駆動走行します。
FCVはEV同様、ガソリンを使用しないため二酸化炭素の排出量はゼロですが、発電自体を自分で行うという点から、火力発電など環境汚染を伴う電気に由来しないため、「究極のエコカー」と称されています。
<EVとは>
EV(電気自動車)は、電気をエネルギーとして、100%モーター駆動で走行する自動車です。
エンジンを搭載していないため、維持費にはガソリン代が一切含まれず、エンジン特有の発進直後の加速ラグがないことも特徴の一つです。
公共設備として設置された充電スタンドや家庭用電源から充電することを想定しています。
以上がガソリンエンジン車以外の4つの自動車区分です。
さらに、ハイブリッドの中にもマイルドハイブリッドとストロングハイブリッドがあります。
ハイブリッドといえばプリウスに代表されるようにトヨタの土壇場です。
なぜならばトヨタは企業規模が大きいためスケールメリットを使ってコストダウンができるからです。
そんなトヨタが採用するのがストロングハイブリッドです。
プリウスなどは典型的なストロングハイブリッド車です。
具体的には200V電池を650Vまで昇圧してモーターを駆動するシステムを採用しています。
それに対して、最新のメルセデスベンツS450等は48Vのマイルドハイブリッドを採用しています。
マイルドハイブリッドはストロングハイブリッドと違い、実質的にはガソリンエンジンの補助的な役割として少し電気の力を借りるといったスタイルです。
内訳としては、現状では世界はマイルドハイブリッドが主流となっています。
それに対し日本はトヨタのプリウスに代表されますようにストロングハイブリッドが主流となっています。
ここから分かることは、日本は燃費や環境に対する意識が非常に高いということなのです。
日本は資源を持たない国としても有名です。
ガソリンエンジンにとって必要不可欠な化石燃料に関しても輸入に頼っています。
資源を持たない日本にとっては車は全て電動化し化石燃料に依存しない車社会を実現することが理想とされています。
化石燃料に依存する社会
ではなぜ人類は化石燃料から離れることができないのでしょうか?
その答えは非常にシンプルです。
石油はエネルギー密度の大きさ(重さ・体積の割に多きなエネルギーが出る)と、使い勝手のよい液体燃料ということで、非常に優秀なエネルギー源なのです。
作る(掘り出す)エネルギーに比べて、出すエネルギーも大きいですし、そんなエネルギー源が安く手に入れられたのだから使わない手はないということですっかり依存してしまっているのです。
現状、車に関しても一次エネルギーに関しても石油資源に依存するシステムが出来上がっています。
そのシステム下においてはガソリンを必要とするハイブリッドエンジンが必要とされます。
ですが、欧州を中心にガソリン車の販売を禁止する動きが強まってきています。
実際、ドイツ連邦議会は、2030年までに発火燃焼エンジン(ディーゼル・ガソリン自動車)を禁止するという決議案を採択しました。
決議案とは議会が政府に対して要望を示すものであり、法律ではないため法的拘束力は無いのですが、今回の決議案はドイツ議会において超党派の支援を受けて成立したものであり、今後の政府の政策に大きな影響を与える可能性もあります。
そしてもし政府が法案として提出し可決されれば、ドイツ市民は将来電気もしくは水素自動車しか購入できなくなるのです。
化石燃料を肯定する動きと否定する動き・・・。
このような2つの大きな動きが世界において出ています。
これらをグローバル化の観点から考えるのならば、未来を見通すことができます。
グローバル化は異なる価値観を受け入れる多様性を持っています。
一方で二極化を促しインフラを画一化する働きを持っています。
この観点から、生き残る資源は電気かガソリンかどちらか一方であると言えるでしょう。
日本の自動車最大手メーカーとして君臨するトヨタは、一貫してガソリンエンジンをサポートする姿勢を見せてきましたが、近年になってPHV(プラグインハイブリッド)というシステムを開発しました。
これは非常に世相を表すものです。
ガソリンも必要であるけれどバッテリーの充電も必要であるということです。
言い換えれば、ガソリンと電気の両方ともを必要としている状況が今であるということなのです。
出来上がった既存のシステムの上で適切に発展するというのは合理的だと考える味方が世界の主たる考え方になっているという事実ともとれます。
その中で石油資源に依存しながらも適切に電動化していくという流れができてきています。
グローバル化というのは世界共通のインフラを必要とします。
したがいまして、この電動化の流れに逆らうと自然と淘汰されていくことになるのです。
こう考えると、とにかく電動化が全てであるといったような考え方を持ってしまいますが、それだけではありません。
実際、有名なモータージャーナリストである清水和夫さんがある車のインプレッションの中で非常に説得力のある説明をされています。
それは、
「ガソリンエンジンの歴史は人類に対し非常に効率的なエンジンをもたらした。一方、電気モーターの歴史は浅く現状では非常に非効率的なモーターと言わざるを得ない。」
という言葉です。
これは非常に的を得ています。
車の歴史というのは石油の歴史なのです。
言い換えれば、我々は石油資源に依存し今日の社会を築いてきたのです。
その中で多数のイノベーションが生み出されたのです。
したがって現代の社会というのは、石油資源を非常に効率良く生かすことのできる社会なのです。
にもかかわらず、なぜ我々は電気モーターの道に進むのでしょうか?
持続可能な社会のために
そこには環境という概念があります。
現在、我々人類は持続可能な社会という課題に対してグローバルに取り組んでいます。
その課題の中に環境問題というものがあります。
どれほど効率的なエンジンであっても、システムであってもそれが環境に悪いとなると話は変わります。
モータージャーナリストの清水和夫さんはこのように付け加えておられます。
「人間の本能や欲望はガソリンエンジンを必要とし、環境は電気モーターを必要とする。」
と。
非常に端的に表しておられます。
たしかにポルシェの911やメルセデスベンツのAMGのような大排気量のガソリンエンジン車に乗ってドライブをすると、この上の無い満足感や充足感を得られるのかもしれません。
ですが、環境には良くありません。
そのような本能と理性のせめぎあいの中で我々の社会は成り立っているということなのです。
さて、以下にガソリンエンジンに対して規制措置をとることを決定した国々を列挙します。
・ノルウェーは2030年からEVとHVのみを販売することを決定
・オランダは2025年からEVのみを販売することを決定
・インドは2030年からEVとHVだけを販売することを決定
・中国は明確な時期はまだ未確定だが将来的にはEVとHVだけを販売することを決定
・イギリスは2040年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止することを決定
・フランスは2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売することを禁止し、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを決定
・その他に、バルセロナ、コペンハーゲン、バンクーバーなどの都市は2030年までにガソリン車とディーゼル車を禁止する計画を保持
人類の理性への目覚めはこのような伝統的な車からクリーンでエコロジーな移動手段としての車へと変化していくと言えます。
では人々が持つ本能や欲望やガソリン車に代表されるような車文化はどうなっていくのでしょうか?
それらは今後徐々に淘汰されていくことが予想されます。
そして、過剰に理性的な価値観が社会を支配するようになっていくと考えられます。
なぜならばそれが近代合理主義であるからです。
人々の合理性や理性に乗っ取って社会は進展していくからです。
実質的には、グローバル化は日本に本当の意味で近代化をもたらします。
したがって、理性が完全に蔓延する社会はもう目前であると言えます。